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ジュディ 虹の彼方に

 

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オズの魔法使』で世界的スターになったジュディ・ガーランドの晩年を描いた伝記映画。

 ジュディ・ガーランドといえば華やかな活躍の裏で、プライベートを食事含め極端に制限されたり、寝ずに撮影を続けるために覚醒剤を盛られたりと当時の映画界の闇をこれでもかと詰め込んだようなエピソードが有名。同じく女優であるジュディの娘ライザ・ミネリの「母を殺したのはハリウッドだ」っていう言葉を何年か前に知って、それがずっと忘れられなかったのでこの映画も観てみたいと思っていました。

 

伝記映画だと主役は美化されがちですが、作中のジュディは明らかに人間性に問題がある人物として描かれていたのが面白かったです。

 

おそらく幼少期から過酷な世界に身を置いていた影響で酒と薬物に浸り借金まみれで基本的に情緒不安定、子供を愛しているのは間違いないんでしょうけど明らかに良い母親ではない。ステージに立ったら圧巻のパフォーマンスを見せるし、歌を通した観客との対話に夢を抱いているというのも本当なんでしょうけど、リハも適当だし、本番前は心を病んでホテルに引きこもったり、仕事や歌うことに真摯とはとても言えない。

 

終盤に仕事を失ってしまうのも酔った状態でステージに立って客に暴言を吐いたのが原因だし冷めた目で見てしまうと「いや大体全部お前のせいやんけ…」となってしまう部分もあります。

 

ジュディに対して共感しにくかったのは『オズの魔法使』のドロシーだったときの回想描写が思ったよりあっさりだったのもあるかもしれません(十分えげつないですが)。

この辺は彼女がどういう扱いを受けていたのかというのは向こうの国だとみっちり描くまでもない常識だったりするのかな、とは思いましたが。

 

ただあえて共感や同情を誘うキャラクター造形になっていないことで「業界や自らの才能に翻弄されたジュディ・ガーランドという人がいて、その中でも懸命に生き切った」という事実を現実味をもって描いていて、変に美化しない分伝記映画として真摯な作りになっていたのかなと思います。

 

ジュディ・ガーランドを演じたレネー・ゼルウィガーは歌手になったほうがいいんじゃないのってくらいステージのシーンが圧巻だったし、最後の『オーバー・ザ・レインボー』は彼女が信じていたものが実現した瞬間だったのもあって迫力が凄かったです。アカデミー主演女優賞も納得ですね…。

 

先にも書いたように彼女の人格に影響を与えたであろう過去の描写が割とさらっとしてたのもあってストーリー自体は淡々と進んでいった印象なのですが、ステージパフォーマンスのためだけでも観る価値ある映画だと思います。