エレファント・マン
Twitterで映画の話をしていたら、とあるフォロワーさんがデビッド・リンチのファンであることを初めて知りました。
考えてみたら今までデビッド・リンチの作品観たことないな~と思ってお勧めを聞くと「1作目から順に全部」というリンチブートキャンプを提案されたのですが、1作目の『イレイザーヘッド』が配信サイトや近所のレンタル屋を探しても全然ない。
仕方がないので2作目の『エレファント・マン』を借りてきました。
元々一度は観てみたいと思っていた作品なのでいい機会でしたね。
有名な作品なので知っている方も多いと思いますが一応こんな話。
19世紀末のロンドンを舞台に、実在した奇形の青年ジョン・メリックの悲劇の人生を、「イレイザーヘッド」の鬼才デビッド・リンチ監督が映画化。見世物小屋で“エレファント・マン”として暮らしていた青年ジョンの元に、ある日外科医のトリーヴスという男が現れる。ジョンの特異な容姿に興味を持ったトリーヴスは、彼を研究材料にするため、自分が勤める病院に連れ帰ることに。こうしてジョンとトリーヴスの交流が始まるが……。
実際に観る前はフリークをネタにした悪趣味な映画ってイメージがあったのですが、あくまでメインはジョン・メリックとトリーヴスの交流を軸としたヒューマンドラマでした。そうだよね?
2人が関わり合うようになるきっかけはトリーヴスがジョンを学会発表のネタにするためという、一般的に考えてあまり褒められたものではないですが、そんな契機であってもいつの間にか2人の間に友情が成立していくところが何より良くて、打算による関係が本物の感情に昇華されていく話はやっぱり面白いと再認識しました。そういう話ばっかり好きになってしまう。
トリーヴスにとってジョンは元々研究材料、もっと悪く言うと名声を得るためのネタでしかなかったんでしょうけど、それでもジョンはトリーヴスとの出会いに救われているっていうのが考えさせられるポイント。
終盤で「僕は象じゃない!これでも人間なんだ!」と声を上げるシーンがあるのですが、今まで見世物小屋の客集め(+興行師の虐待)に甘んじてきて、声を出すことすら拒んできたジョンに自分は人間であること、自分の意思を持つことを自覚させたのがトリーヴスなのは間違いない。ヒューマギアも夢を持って良いしエレファントマンも夢を持って良い。
そのきっかけが褒められた動機かどうかというのはあんまり関係ないんだな、と感じました。逆に完全な善意でやったことが裏目に出ることだってありますからね。動機が崇高かどうかなんて実際どうでもよくて、他人の感情や行動に前向きな影響を与えたこと自体に価値があるんじゃないかと思います。
そういえばフリーク繋がりの『グレイテスト・ショーマン』とかまさにそういう話でしたね。
結局ジョンは見世物としてしか生きられないことを強調するような悪趣味なシーンも多く、実際ただの猟奇映画ってことでも良いのかもしれませんが、それだけに留まらない友情やジョンの救済が描かれていた作品なんだと思いました。
他だとロンドンの街の頽廃感ある画面作りが抜群に印象的でした。特に見世物小屋があるような裏通り。1980年の作品なのにモノクロなのはこういう雰囲気を出すために意図的にやってるんだと思いますが、やっぱりセンスある監督なんだな…。
でも、最初女性が象に犯される映像から始まるのはマジで頭おかしいと思うし、やっぱりただの悪趣味な映画なのかもしれません。途中でもう1回その映像挟まれるし。
せっかく勧めていただいたので、他のリンチ作品も少しずつ観ていこうと思います。
おしまい。