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他人の好意を台無しにするブログ

アリス殺し

 

最近、不思議の国に迷い込んだアリスという少女の夢ばかり見る栗栖川亜理。ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見たある日、亜理の通う大学では玉子という綽名の研究員が屋上から転落して死亡していた──その後も夢と現実は互いを映し合うように、怪死事件が相次ぐ。そして事件を捜査する三月兎と帽子屋は、最重要容疑者にアリスを名指し……邪悪な夢想と驚愕のトリック!

何年か前からずっと読みたいとは思っていた小説。半年くらい前に購入し、ずっと本棚に寝かせていたのですが、やっと読み始めることに。気になった本は気になってるうちに買って家に置いておくようにしているのですが、それに比して読書に費やす時間が短すぎて未読本がどんどん溜まっていく…

映像作品や漫画に比べて相対するのにエネルギーが必要なメディアなので、いつの間にやらどんどん他媒体に流れて行ってしまうんですよね…。もっと活字を読む時間を作っていきたい。

 

不思議の国のアリス』のような世界のキャラクターと夢の中でリンクしている人物に次々と降りかかる怪死事件の謎を解いていく物語。

 

なんといっても不思議の国のキャラクターが繰り広げる荒唐無稽な会話劇が魅力的でした。

主人公であるアリスは割と現実世界の価値観に沿った理性的な行動を取るのですが、他のキャラクターは基本的に頭が弱いか頭がおかしいので、基本的にまともな会話が成立しない。そんな彼らに連続殺人の推理なんてできるわけがなく、同語反復循環論法なんでもありの気狂いじみたロジックでアリスに疑いがかかっていく。常識が通用しない会話劇は読んでいてとても楽しかったです。最初の方はあまりにも会話が通じない三月兎や帽子屋、蜥蜴のビルにアリス同様イラついていた部分もあるのですが、次第に面白くなってきてしまったんですよね。こういう会話を考え付くの、本当にすごい創造力してるな…と感心しながら読んでいました。作者の頭が狂っていたら簡単かもしれませんが。

「亜理の世界」と「アリスの世界」、殺意と殺人、それぞれがどちらの世界に存在するのかというこの作品ならではのミステリ要素も良かったんですけど、作品の魅力としてはやっぱり不思議の国のカオスすぎる世界観が大きいかな、と。

 

あとはメルヘンチックな空気を漂わせておいて殺人や人体破壊の描写がやたらと生々しいのもギャップがあって良かったですね。特に終盤の処刑の描写は、痛々しい人体破壊描写と不思議の国の狂った雰囲気が存分に出ていて印象的でした。

 

『アリス殺し』を第1作とする「メルヘン殺し」シリーズは何作か出ているんですけど、本作の世界観に割とハマってしまったので、他の作品も読んでまたこのダークでクレイジーな作品世界に浸りたくなりました。

第2作『クララ殺し』は既に本棚に寝かしてあるので、まずはこれから読むことにします。

 

おしまい。