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他人の好意を台無しにするブログ

ヤクザと家族 The Family

www.yakuzatokazoku.com

これは、ヤクザという生き方を選んだ男の3つの時代にわたる物語。荒れた少年期に地元の親分から手を差し伸べられ、父子の契りを結んだ男・山本。ヤクザの世界でのし上がる彼は、やがて愛する自分の≪家族≫とも出会う。ところが、暴対法の施行はヤクザのあり方を一変させ、因縁の敵との戦いの中、生き方を貫いていくことは一方でかけがえのないものを失うことになっていくー。

ヤクザを題材にした映画って初めて観たかもしれない。

主人公のケン坊が懲役くらって14年間世間から隔絶されていた間に、ヤクザという存在自体が絶滅危惧種になってしまった。

そんな現代でヤクザはどう生きていくかというお話。時代の変化の中で、ある種の人が社会から弾かれていくというどうしようもない現実を見せられている感じでした。

 

ケン坊が刑務所にいた期間、つまり彼が時代の変化から取り残された期間が2005年から2019年の間っていうのが絶妙だなと思った。

ヤクザ云々抜きでもこの時期の社会の変化って目まぐるしいと思うし、普通に生活していてもついていけない人がいてもおかしくないよな、と。

そんな時代の変化の中で、社会の締め付けも強くなって、前科者でもあるケン坊や他のヤクザたちの居場所はもうないことが淡々と描かれていた。

大きな流れの中では結局個人がどう頑張ってもあんまり意味がないという無常さ、悲哀が作品全体に流れていたように感じる。実際作中のヤクザはほぼ全員不幸な目に遭ってるし。

家も借りられない、銀行口座も作れない、携帯も契約できないというのは現代社会で割と本当に居場所がないといっていいレベルだと思うんですよね。

しかも暴力団を抜けても5年間はその制限が適用される。反社だからって言ってしまえばそれまでなんですけど、組長が言っていたようにこの生き方しかできなかった人っていうのも実際にいるんだろうなあ。

あとはケン坊たちが手に入れたささやかな幸せが破滅するきっかけがSNSっていうのも時代の流れに翻弄された人間の末路として象徴的だった。

 

本当に誰も幸せになってないし割と悲惨な結末だったけど、生き様が誰かの心に刻まれた分ケン坊は救われていたのかな、と思わせる塩梅はちょうどよかったのではないでしょうか。

 

社会から居場所がなくなったヤクザたちの描写がとにかく悲痛でだいぶ重めでしたが、しっかりとしたメッセージが込められている上に俳優陣の演技も圧巻で見ごたえのある作品でした。インターネットで右から左からああだのこうだの言われてイデオロギー論争のネタになっている『新聞記者』と同じ監督なのは観た後に知りましたが、そういえばあっちも綾野剛出てましたよね(観てないけど)。

演技は圧巻なんだけど、流石に今の綾野剛は19歳とか25歳には見えないよね…。

あと尾野真千子(ちょっと老けて見える女子大生)も無理があるだろ…。