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これは君の物語
これは君の物語 [Prime Video]








兼ねてから友人がお勧めしてきたアニメ。気になってはいたので1話を観てみました。

この原作を友人が某声優のプレボに入れたのがきっかけでその声優さんが原作のファンになり、その方はアニメの主役を演じることになったらしいです。面白過ぎるでしょ。

「出会い」でお互いの人生が変わっていく、という筋立て自体が好きなので面白くなりそうだなと思って観ていましたが、「無理なんてない」ことを信じて夢に向かって生きている千雪が無自覚に育人の夢に対し「無理なんじゃない」と言ってしまったことに気付くシーンでまず作品に引き込まれました。
そして終盤、千雪の父が育人に向ける「原石を見つけたときの目」に千雪が気付いたシーン。
このシーン、「今の千雪」にはもうこの目が100%の純度で向けられていないことを千雪は分かっているから、千雪は育人のことを純粋に喜んでいるだけじゃない。「この2人は今後ただの友達、相棒になるわけじゃなさそうだな」と思うと猛烈に続きが気になってきました。

同日たまたまネカフェに行くことになったので原作を一気に読みました。
その結果ハマってしまったので書店で全巻購入しました。おかげで2ヶ月前に買った本棚が埋まってしまいました。

ファッション業界が舞台、という少年誌では珍しいジャンルの作品。
なのですが、展開自体は近年逆に珍しいくらいの熱い真剣勝負の連続。これはバトル漫画なのか?
あまり馴染みのない世界の物語に読者を引き込むのは非常に技量が要ることだと思いますが、一晩中ページをめくる手が止まらなかったです。次の日普通に用事あったのに寝不足になりました。
デザイナーになりたいという夢は燻っていたものの、洋服作りはあくまで趣味だった育人が千雪との出会いをきっかけにプロの世界、真剣勝負の世界に足を踏み入れていき、悔しい思いもしながら「負けたくない」という気持ちを強めていく。これだけ言うと本当にスポ根ものですよね。

漫画なので絵の力も重要だと思うのですが、特にそれを感じたのが芸華祭決勝の香留のショーと千雪。
香留のステージ、あくまで育人と千雪の物語なのでストーリー上はサラッと流れてしまった感がありますが決勝最初の強キャラとして強烈な印象を残していきました。もうこいつが優勝でいいんじゃないかな…。とさえ思った。
千雪は158cmとモデルとしてはかなり小柄ながら時折場を圧倒する雰囲気、オーラを出す力があるというキャラクターなのですが、それを説得力を持った演出にできるのは作画の力がかなり大きい。
これで作者の初連載だというから驚きです。

この作品で特に見応えがあると思ったのはキャラクター同士の関係性。
1話の時点で「着地点は見えている」物語であり、育人と千雪は「お互いに出会うことで運命が変わった」同士ある意味恩人と言えますし、同じ夢を追いかける仲間だし、勿論友達だし、お互いを尊敬もしている。だけど千雪が言うように「絶対に負けたくない」ライバルでもあるというのが王道だけど熱い。
千雪と心の関係性はもっと好きです。
身長のことでずっと苦しい思いをしてきた千雪が欲しかった資質を全て持っているのに「モデルはやりたくない」って言ってる心のことを快く思うはずがないんですよね。
そんな2人が組むことになって、当初お互いのことを「嫌い」とまで言った2人が一緒に戦えたのは、相手の「真剣な気持ち」を信じているから。馴れ合いや友達ごっこじゃなくてもっと根本にあるものを認め合っているからこそ、向いている方向が真逆でも一緒に歩んでいける。2人の友情っていうのはその後からついてくるものなんですよね。2人のショーの圧巻さもあってすごく美しい関係だなと思いました。

芸華祭で1つの大きな盛り上がりを見せた後は、ストイックな天才だらけの本作品には珍しいコネ入社であんまり能力も高くない、いわゆる「凡人キャラ」の美依が登場し、作中の登場人物にも読者にもいい感じでフラストレーションを与えているような印象です。
この漫画、コネ持ちキャラも基本的に優秀なやつばかりなのでコネだけの凡人!って感じのキャラはこいつくらいしかいないんじゃないでしょうか。
基本的に自己主張のぶつかり合いで成り立っているこの作品で「みんな仲良く」みたいな調和主義な部分も異質な感じがしていますが、今週末発売の14巻ではその美依に大きな変化が起こる感じになりそうなので期待しています。
 
アニメも原作のどの辺までやるのか分からないけど楽しみです。
まだ1話しかやってないですが、1話の最後の「都村育人がトップデザイナーになるまでの物語」を育人の1人称に変えたのはいい変更点だと思ったし、構成スタッフが有能っぽいなと感じたのでこちらも期待。

いい作品に出会えたなと思います。勧めてくれてありがとう。