その分現金でくださいよ。

他人の好意を台無しにするブログ

老人と海

 

老人と海(新潮文庫)

老人と海(新潮文庫)

 

 今まで読んだことなかったのかよ、っていう話ですが、書店で見かけて表紙があまりにも綺麗だったので購入してしまいました。というか購入誘因の95%が表紙の装丁。

この手の作品は(あれば)なるべく光文社古典新訳で買って読むことが多くて、古典新訳のシンプルな表紙もそれはそれで好きなんですけど、あまりにも新潮文庫の表紙が美しかったので2分後にはレジに持って行ってしまいました。やはり本も見た目は大事。

一応訳が新しいかどうかは確認しましたけど(あまりにも昔の翻訳だと読みにくいので)

 

言ってしまえば老人が漁に出て巨大なカジキを釣って港に持って帰ろうとするだけの話なのですが、その単純なストーリーの中で海の描写の美しさ、逆境でもひたむきに戦い続けるサンチアゴの姿、命をかけたやりとりの中でカジキとの間に生まれる親愛の情だったりと見どころ(小説に対してこの表現は合っているのだろうか)の多い作品でした。

 

最終的に奮闘むなしくカジキは殆どサメに食べられてしまって、漁としては徒労に終わってしまう。自然の厳しさを端的に表しているし、いわゆるバッドエンドとも思える展開なのですが、「海は女性のようなもの」と考えていたサンチアゴはそれをあるがまま受け入れており、穏やかな終局を迎えていたのが印象的でした。海に生きる漁師の生き方として心魅かれる描写でしたし、この辺はヘミングウェイの自然に対する向き合い方が表れている部分なんだろうと思いました。

 

後ろについているヘミングウェイの人生についての解説も内容が充実してて面白く読ませていただいたんですけど、50手前で妻と一緒に行った旅先で出会った31歳下の女性にガチ恋して文通を始め、それを周りに公言していたっていうエピソードが破天荒すぎて笑ってしまいました。干支2周以上してるし絶対アウトですよね。本編の爽やかな読後感を返してくれ。

夫人は当然ヘミングウェイに愛想をつかすのですが、そんな中書かれた本作『老人と海』の完成原稿を読んで「今までの非礼を許してもいい」って言ったらしくてこれも笑う。文章が上手ければ浮気も許してもらえるんでしょうか?

 

おしまい。