市民ケーン
新聞王ケーンが、“バラのつぼみ”という謎の言葉を残して死んだ。新聞記者のトンプソンは、その言葉の意味を求めて、生前のケーンを知る人物にあたるが……。様々な人物の証言から、新聞界に君臨した男の実像が浮かび上がる、斬新な構成と演出で評判を呼んだ、ウェルズ弱冠25歳の処女作。
最近モノクロ時代の古典映画がAmazonプライムに追加されつつあるのでちょくちょくチェックしています。どうしても配信は近年の作品が中心で、こういった過去の名作には弱い印象があるので、このジャンルの配信を拡充してくれるのは個人的には嬉しいですね。
そしてレンタルビデオ店の立場がどんどんなくなっていく。
新聞王として巨万の富を得たケーンが「バラのつぼみ」という言葉を残してこの世を去り、その真意を記事にするために記者がケーンの関係者に証言を求め、ケーンがどういう人物なのか浮かび上がってくる…という構成。
ケーンがいわゆる自己愛性的なパーソナリティーを抱えていて、他人から愛されたいという願望があるのに他人に愛を与えないから真に愛されることがない、という悲しい人間であることが描き出されていく。億万長者のサクセスストーリーにも見えるのですが、それでもやはり本質的には空虚であるケーンの描写が見事でした。
そして誰も「バラのつぼみ」については知らないし、なぜケーンがあのような人間になったのかもはっきりとは描かれない。
さぞかし重要な意味がある言葉かと思えば「結局分からない」という結論で映画が終わってしまって「ええっ…」と思いましたが、登場人物・観客含め誰もケーンがどういう人物なのか完全に理解できていないし、そもそも理解なんてできるのか、というオチなのではないでしょうか。
「バラのつぼみ」については最後のシーンで仄めかされてはいましたが、正直画質もあって1回観ただけだと何のことか分かりませんでした。
当時存命だった新聞王ハーストをモデルにしているため本人がブチ切れた…というスキャンダラスなエピソードもあったらしいですが、まぁこの内容だったら怒るよな…
そして観た後に知ったのですが、オーソン・ウェルズが25歳でこの映画を監督し、主演までやりきったということに驚き。その歳で晩年の老人時代まで演じ切っているのは凄すぎる。
現代の目から見るとそこまで新鮮に映るというわけでもないのですが、やはり名作には違いないかな、と。
『ソーシャル・ネットワーク』みたいな現代の作品にも影響を与えているわけですし。*1
Amazonプライムに古典映画はまだまだあるので、他のも観ていきたいですね。
*1:あまり好きではないですが