その分現金でくださいよ。

他人の好意を台無しにするブログ

どうにかなる日々

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寡聞にして同原作者の作品には触れたことがなかったのですが、諸事情により計6回鑑賞いたしました。
流石に短期間でここまでの回数同じ映画を観ることは…3年はなさそう。

 

誰かを好きになることで登場人物の日常がささやかに変化していく様子を描いたオムニバス作品。映画自体の尺が短いこともあって、全体的にあえて細かく描写しない、行間を想像させるようなカットが多かったのが印象的で、台詞がなく生活音のみ入るシーンで滲み出る何気ない日常の雰囲気が心地よかったです。性的なシーンや会話も多かったですが、決して扇情的な描き方をしているわけではなく、あくまで日常の延長線という形で描かれていた印象でした。自然な流れというか。

 

「えっちゃんとあやさん」は昔同じ女性と付き合っていた2人が出会うGL。
散々2人を振り回しておいて普通に男と結婚する悪い女から早見沙織さんの声がする時点で適材適所感があり面白かった。
正直百合は専門外というかあまり好みではないのですが、えっちゃんとあやさんを演じる2人のゆったりとしたテンポの会話から生まれるささやかな幸福感が良かったですね。
先に書いた何気ない日常の雰囲気を最も感じたのはこのパート。あと何回観てもえっちゃんがあやさんに「うち来る?」って誘う声が裏返ってるのが最高です。

 

「澤先生と矢ヶ崎くん」は卒業式終了後に生徒に好意を打ち明けられたことを契機に澤先生の日常が変わっていくBL。
澤先生がめっちゃニヤニヤしながら周りにバラの花が浮かんでくる演出はちょっと引いてしまいましたが、気になる相手ができたらそうでもないのにその人に似てるように感じてしまうのは嫌にリアルでしたね…。とはいえ2人が直接対話するシーンはほぼない上に澤先生の独白も抽象的で何を考えているのかあまり掴めなかった部分もあり。上映前の特別映像で演じた櫻井さんも完璧には理解しきれていないって言ってたし、まぁそういうものなんでしょう。

 

「しんちゃんと小夜子」「みかちゃんとしんちゃん」はAVに出演していた小夜子と出会ったことで
いたいけな小学生だったしんちゃんとみかちゃんが「異性」を意識するようになり、2人の関係性も変わっていく話。
2エピソード使って深く掘り下げられていたこともあって、ストーリー的には一番楽しめました。みかちゃんの声に惑わされたとかではなく。
演じるファイルーズあいさんに当て書きしたんじゃないかと思えるくらい一体感のある小夜子というキャラクターがしんちゃんを振り回していたのも面白かったし、
みかちゃんが小夜子に対して恋敵としての敵意を向けているだけじゃなくて、対面したときには「本物だ」と感動していたり、出演ビデオを中学生になっても繰り返し観ていたりと、ある種女性としての憧れを抱いているというアンビバレンスがとても良かったです。そこから最後ビデオテープをぐしゃぐしゃにするのに繋がるのも小夜子の影響を振り切った感じがあって爽快でしたね。

小夜子と出会ったことで性というものを意識するようになったみかちゃんが(ディレクションではあまり深い意味は理解していない演技を求められたとのことですが)しんちゃんに直球で迫っていく様子、見ているこちらがドキドキしてしまいました。

更に言うと最後の「なんてことは、しませんでしたとさ。」の締め方が美しすぎましたね。使わないのかよ…と思わせといてからのコレは反則でしょ。*1

 

モノマネ

モノマネ

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そしてこの映画の音楽も担当しているクリープハイプの主題歌『モノマネ』が本当に良い曲でした。クリープハイプは映画やドラマのタイアップ曲を何曲か知っている程度であまり詳しくなかったのですが、何気ない日常で同じ気持ちになれることの幸せを歌った歌詞がかなり丁寧に作品の世界観に寄り添っているなと思いました。

 

1時間という短い尺の作品でしたが充実感のある作品だったし、年甲斐もなく映画を観て胸がざわついてしまいました。入場特典の書き下ろしアフターストーリーも良かったし、かなり満足度の高い作品でした。6回観るのも致し方ないよね。

 

おしまい。

*1:アフターストーリーの漫画と矛盾してないか?とは思いましたが