その分現金でくださいよ。

他人の好意を台無しにするブログ

失くした体

空前絶後の自宅待機シーズン、皆様いかがお過ごしでしょうか。

根が引きこもりなのでずっと自宅にいること自体はあまり苦ではないのですが、予定していた友人とのキャンプや旅行の計画が中止になってしまったり、楽しみにしていた映画の公開延期が相次いだり、延期どころか最近まで毎週のように通ってた映画館が営業停止になってしまったりと楽しみの選択肢が奪われたのは痛いですね。

そして最近映画を観ないのでブログのネタも激減しました。

 

ご時世柄外に出れないのは仕方ないですし、この機会を利用して今まで触れてこなかった作品に親しんでみたり、好きな作品をもう一度観直してみることに時間を使っていこうと思っていて、その一環で『僕のヒーローアカデミア』を1話から観始めたのですが今更ドハマりしてしまいました。トガヒミコちゃんが可愛い。

 

www.netflix.com

 

…ヒロアカはおいといて、時間だけは有り余っているので以前から気になっていた作品を観ていくことにしました。

海外のいくつかの映画賞で受賞を果たしたフランスのアニメ映画。『アメリ』の脚本家の短編小説が原作になっているらしいです。逆アメリであるところの名取羽美ちゃんのファンではありますが『アメリ』は観たことないです。

 

誰のかも分からない右手首だけがパリの街を放浪していって、次第に元々の体の記憶を取り戻しつつ自分の「失くした体」に向かっていくお話。

序盤に観る側の興味を引くのが凄く上手くて、突拍子もない設定なのに、作品世界にすんなりと入っていけるのが好感度高かったです。

 

主人公であるナウフェル(の右手)は(口がないので)全く喋らないし、モノローグで状況を説明するような演出も一切なくて、完全に手の動きと周りの状況だけで話が進むという表現手法が使われていました。

 

なぜ手が動いているのか、そもそもこの手は誰の手なのか、なぜ手だけ切断されているのか、などということの説明は一切なくて、生首ならぬ生手首が他人にバレないようステルスゲームのようにどこかに向かっていく。

普通の作品ではお目にかかれない(手首が街をふらつく作品なんてそうそうないので当たり前ですよね)ような映像やカメラワークが観ていてとても楽しい上に、最序盤の時点で提示された謎が気になってどんどん引き込まれてしまいました。

 

最終的に右手の元の持ち主(?)であるナウフェルはかなり冴えない青年で、手首が切断された理由もあまりにもしょうもない理由(正直拍子抜けしました)だったことが分かります。

 

そんな中で、元の身体に戻るという「過去」を求めてさまよっていた右手が出会った本体は、肉体的にも精神的にも大きな傷を負ったにもかかわらず、「未来」に向かって前に進んでいこうとしていたという対比で幕を閉じるエンディングは爽やかでした。

 

本編中で描かれるナウフェルはあまりにもしょうもない男だったので、男子三日会わざれば刮目せよというか、強くなったんだな…とこみあげてくるものがありました。

 それに繋がる演出になるのでしょうか、ラストシーンの少し前に「本体が寝ているところに右手が寄り添って、本体の手首と繋がろうとするけれど包帯が巻かれた手首が離れていく」シーンがあって、本体はもう「過去」である右手を振り切って前に進もうとしていることを表しているんだなと最後に気付いてすごくいいシーンだなと思いました。

 

本体がまだ生きてるって分かった時点で最後は元に戻るのかな…と想像していたし、大冒険を繰り広げた右手に対し、話を追うごとに感情移入していたので少し切ない部分もありますが。

 

いつも観ているアニメに比べると後期思春期感がなくてすごく地味なのは否めないですが、悲しいながらもどこか優しい雰囲気で、他作品ではなかなか観ることのない映像や表現を楽しむことができる作品でした。ネットフリックスはこういう海外作品や限定配信作品が多数あるのでやっぱり僕には必要なインフラだな~と再認識しました。

 

余談ですが、よくアニメの話をする友人は基本的に変なアニメしか勧めてこないので、自分で積極的に探すかもっと真剣に勧めてくれる友人を探すしかないですね。面白いのあったら(できればアマプラかネトフリで配信しているやつで)教えてください。

 

おしまい。