ノマドランド
企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。
主人公のファーンが出会うノマドたちの殆どが実際の車上生活者、というもはやフィクションなのかノンフィクションなのか分からないぶっ飛んだ映画。
あまりにも高評価しか流れてこなかったので日本公開前からずっと楽しみにしていました。
自由に旅をしているように見える主人公が、実はずっと過去に囚われていた、という矛盾が面白い作品でした。
最初はファーンが時代の被害者になって、あてもなく放浪生活をしているのかな、と思っていたけど、必ずしもそうではないことが分かっていく。
出会った人々の中には彼女に手を差し伸べる人もいたけど、もう孤独が染みついてしまっていて、誰かと生きること自体が困難になっていたファーンの姿が痛々しい。
その孤独の原因は夫と住み慣れた街を失った、という喪失感で、作中色々な場所を転々としているのに心は昔の家に囚われている、というのが皮肉だな、と。
序盤にファーンは「homelessではなくhouselessだ」と言っていたけれど、最後まで観てから考えるとhomelessだったんじゃないかなあ…
アメリカの自然や人との触れ合いによってその傷を癒す旅路だったのかな。文明病に囚われているので、自然との調和みたいなノリは個人的にあまり好きではないけど…。
そして何よりファーンが途中で出会う末期がん患者のスワンキーがカッコよすぎた。
あの状況にあっても自分の最期の過ごし方に対するビジョンが明確で、空が綺麗だと思える精神状態にいられるっていうのは少し憧れてしまう。
死ぬんならああいう風に死にたいわ。