その分現金でくださいよ。

他人の好意を台無しにするブログ

ブラック・クランズマン

年末年始、今年は帰省しなかったし特に用事もあるわけでもないので無限に映画やアニメが観られる。
そして感想を書く時間もあるので書いてはみますが1年は続かなそうですね。

最近気になっていた『ブラック・クランズマン』を観てみました。

ブラック・クランズマン (字幕版)
ジョン・デヴィッド・ワシントン
2019-10-09


コロラドスプリングスの新人かつ初の黒人刑事であるロンが潜入捜査のため白人至上主義団体・KKKのメンバー募集に(しかも本名で。アホですよね)電話して気に入られてしまう。
黒人のロンはもちろん入会どころか話もできるわけがないのでアダム・ドライバー演じるフリップがロンのふりをしてKKKに潜入する、という実話をベースにした映画。
フリップも実はユダヤ人(KKKではユダヤ人も排斥対象です)なので彼にとってもリスクの高い潜入である、ってところで緊張感が高まる。
あまりユダヤの慣習に染まった育ち方をしていなかったため自分を普通の白人だと思っていたフリップが差別主義の権化である団体に潜入することで「ユダヤ人である」というアイデンティティを強く意識するようになったのは、ナショナリズム民族主義の起こりを端的に示唆してて面白かった。

もうそれはストレートに「人種差別」を扱った映画なのですが、黒人学生団体のリーダーである女性も警察官のことをレイシストの集まりとひと括りにしてレッテル貼りをしたり、KKKの集会と黒人権利団体の講演会が並行に描かれ「ホワイト・パワー」と「ブラック・パワー」が交互に叫ばれ、まるで「2つの団体の本質は同じである」ように描かれていたのが印象的でした。
 終盤で学生団体の黒人を殺すためにプラスチック爆弾を仕掛けようとするKKKの白人女性をロンが体を張って止めるも、駆けつけた警官は「黒人が白人女性を襲っている」認定してロンをボコボコにして手錠をかけるシーンがありました。この一幕がどこまで史実なのかは分からないですけど、「KKKを潰しても、法整備をしようが、絶対にそれだけで解決する単純な問題じゃない」と思わせるには十分すぎるくらいやり切れないシーンでした。アジテーターの皆さんは物事を単純化して、まるでそれがなくなれば問題が全て解決するかのように喧伝する(具体例を挙げるのは控えさせていただきます)けれど、世界ってそんなに分かりやすくないんですよね。

ラストは現在アメリカで起きている人種問題が絡んだ暴動、トランプ大統領の演説、そして映画本編にも出てきた元KKKメンバー、デュークが分断を煽っている本物の映像が流されました。
史実を元にしているとはいえあくまで「創作物」である映画で現実の報道映像を流すのって(ちょっとくらいならいいけど)アウトなのでは?って個人的には思ったりするのですが、この映画で1番ショッキングな映像がそれだったことは間違いないんですよね。
人種差別をあまり意識することのない日本に住んでるのでここをネイティブに感じ取ることはできませんが、深刻な問題となっている国ではこれは「史実を基にした娯楽映画」というだけでなく「現実と地続きの問題」であって、その辺が映画祭なんかで評価されたんじゃないかなと勝手に思っています。
KKKのパーティーで「アメリカ・ファースト」って叫んでるシーンなんて露骨でした。

あまりにも社会派な、悪く言えば説教くさい映画は苦手なのですが、 本作は(主に頭のおかしいKKKメンバー・フェリックスのおかげで)潜入の緊張感はあったりするので、エンターテイメントとしてもまぁ見どころはあるかな、と。その点で他の追随を許さないくらい面白い、とは言えないですが…。

今のところアダム・ドライバーが出てる映画はなかなか考えさせられる作品が多いので、機会があれば他のも追ってみようかな。俳優で作品を選ぶオタク。