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他人の好意を台無しにするブログ

ポゼッション

元旦に『死霊の盆踊り』を観に行った新宿シネマカリテで、このポスターが僕の目を引きました。
すっげえ美人(イザベル・アジャーニです)が涙を浮かべながらも不敵な笑みでこちらを見つめている。『死霊の盆踊り』を観に来たはずの僕が、何故か分からないけどこの表情が頭から離れない。惚れたか?

死霊の盆踊り』上映前の予告編でも、この映画の番宣動画が流れました。


不穏さしか感じられない音楽の中、さっきの美人さんが狂ったように叫び続けている。
これを観たらもう僕が考えられることはただひとつしかない。「いったいこれはどんな映画なんだ…?」
しかも公開日は1月4日。もうすぐじゃん。

タイトルだけは知っていた(と言いますが同じタイトルのホラー映画何作かありますよね、1個観たことあるし)映画だし、年始休みで本当にやることがなかったのでまた新宿まで来て観に来ました。

公式サイトに「不条理」って書いてある映画は平たく言うと「この映画は観てもストーリーとか理解できませんよ」って意味だなので、おそらくこの映画もそうなんだろうな、と思っていた一方、「ポゼッション」というのは「所有」という意味以外にも「取り憑く」という意味があるらしいので、悪魔がこの女の人に取り憑いてそれを祓うようなよくあるホラーなんじゃないの、くらいの気持ちでした(僕が以前観た『ポゼッション』が完全にそういう映画だったので)。

東西冷戦下の西ベルリンで単身赴任から帰ってきた主人公のマルクに対し、妻のアンナはやけに余所余所しく、どうも他に男を作っていたらしい。程なく別居することになるのですが、浮気相手の男であるハインリッヒのところにいるわけでもない。第3の男がいるのか?疑惑が深まる中でアンナの異常行動が目立っていき、マルクは探偵を雇いアンナの居所を突き止めるが…という話。

文章にするとただの夫婦の揉め事から来るミステリーのような感じですが、アンナの言動があまりにも常軌を逸している上に、なぜその行動を起こしているのか殆ど説明がないため、主人公のマルクのようにただ振り回され、困り果てるしかない。
その上途中からボロ屋で異形の生物を飼っていることが発覚し、目撃者は次々アンナの手で皆殺しからの解体、しまいには成長した怪物とセックスしている。
絵面の気持ち悪さも相まって、本当に何が起こっているのか、理解しようとしてもしきれない。
最後のシーンも全くもって突拍子がなく、整合性なんてどこかに投げ捨ててしまったかのように映画が終わる。

イザベラ・アジャーニの本当に何かが取り憑いて狂ってしまったかのような演技を口を開けながら眺めていたけれど、頭が全く追いついていかなかった、というのが正直な感想です。

あまりにも理解が追いつかなかったので劇場を出てすぐにパンフレットを買いました。
同じようにパンフレットを買ってる人が何人もいましたが、理由は多分僕と同じでしょう。

それによるとこの映画は「監督であるアンジェイ・ズラウスキーが、妻との離婚問題で苦しんだ経験を基に制作した作品」とのこと。個人的な恨み辛みじゃねえか、と思いましたが、「この映画は意味不明であることに意味がある作品なのかもしれない」と少し腑に落ちた感じがしました。
妻との離婚問題で監督が経験した、女性の(少なくとも監督にとっては)理解不能な部分、不条理な部分、自分の思い通りにいかない部分。
そういう側面がこの映画ではアンナの常人には理解しがたい行動、狂気を孕んだ演出で表現されているのではないかな、と。
そう言われて考えてみると、たしかに「女は信用できない」といった主旨のセリフをマルクは発しているんですよね。こんな映画撮れちゃうくらいのエネルギーってどんだけ離婚辛かったんだよ…。

ただパンフレットで監督のバックグラウンドを知らないと全く理解できない作品は(こっちが疲れるので)あんまり好みではないですね!

最後に、僕がこの映画に興味を持った最大の理由であるイザベル・アジャーニは期待より遥かに凄かった。
ポスターでもあった怪しい笑みは本当に何が真意なのか全く読めずに(雰囲気で言うとゴーン・ガールのラストシーンに近いかも)目が離せなかったし、泣き叫ぶシーンは本当に悪魔が取り憑いたと言われても信じるレベル。実はこの映画で1人2役やってるんですけどもう1役であるヘレンは作中でアンナと対をなす役であり、纏う雰囲気が180度違うのもすごい。
初めてイザベル・アジャーニの出演作を観ましたが、他の映画も観てみたくなりました。
めちゃくちゃ美人だし。