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他人の好意を台無しにするブログ

アス

 

アス (字幕版)

アス (字幕版)

  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: Prime Video
 

アデレードは夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンと共に夏休みを過ごす為、幼少期に住んでいた、カリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れる。早速、友人達と一緒にビーチへ行くが、不気味な偶然に見舞われた事で、過去の原因不明で未解決なトラウマがフラッシュバックする。やがて、家族の身に恐ろしい事が起こるという妄想を強めていくアデレード。その夜、家の前に自分達とそっくりな“わたしたち”がやってくる・・・。

 

ゲット・アウト』と同じジョーダン・ピール監督が描く社会派ホラー。 

先に観た『ゲット・アウト』が現代の人種差別というテーマを上質なスリラー・エンターテインメントに昇華していた良作だったので、こちらの作品も期待していたのですが、あまりストーリーにはハマれず。

単純に「襲ってくるドッペルゲンガーのような奴らは政府の実験で地下に幽閉されていたアメリカ人全員のクローン」という設定があまりにも説得力がなさすぎるのでは…、と思ってしまいました。この家族だけ、というならまだしも(画面作りのためとはいえ)アメリカ人全員にクローンがいて、全員地下空間に住んでいたっていうのはこの映画に要求されるリアリティのラインを下回っている気がします。

そしてその設定が明かされたあたりでオチもなんとなくわかってしまう…という。

ゲット・アウト』で驚かされたような、全てが緻密に計算されたストーリー…という感じではありませんでした。

随所に挟まれるユーモラスな表現はクスっと来たけれども。

 

作品の根底にあるテーマとして、「社会的分断とそれに対する無関心」があるようです。監督のインタビューを読んだりするとまあ言いたいことは理解できるのですが、「じゃあそのメッセージが映画の中に面白くトレースされていたか?」と言われると個人的には疑問符がつきました。

「Us」が「the U.S.」とのダブルミーニングだと気づいたときはなるほど~と思ったけど映画だけ見てこれがアメリカ全体のことを描いた映画か?と言われるとしっくり来なかったし。周辺知識の不足はあると思いますが*1

 

作品を作るにあたって観ている側に届けるメッセージが大切なのは間違いないんですけど、「映画」である以上、あくまで観て面白い作品であることが前提だと思っているので、社会問題に対する切り口をメインに作品が評価されるっていうこと自体があんまり好きじゃないんですよね…。そしてこの映画はそういう扱いをされがちだと思います。

 

普通のホラー映画ならこんなしょうもないこと気にしませんが、本作に限ってはどうしても『ゲット・アウト』と比べてしまった感は否めないですね。

期待値を上げすぎたのかもしれません。

 

おしまい。

*1:作中でも描かれる"Hands Across America"が具体的に何なのか知らなかったし