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他人の好意を台無しにするブログ

プラダを着た悪魔

 

プラダを着た悪魔 (字幕版)

プラダを着た悪魔 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

恋に仕事にがんばるあなたへ贈るゴージャス&ユーモラスなサクセスストーリー。ジャーナリストをめざしてNYにやってきたアンディ。オシャレに興味のない彼女が、世界中の女性が憧れる仕事を手にしてしまった!それは一流ファッション誌“RUNWAY”のカリスマ編集長ミランダのアシスタント。しかし、それは何人もの犠牲者を出してきた恐怖のポストだった!悪魔的にハイレベルな要求と鳴り続けるケイタイ、「センス、ゼロ!!」と酷評され、私生活はめちゃめちゃ。このままでいいの? 私って、本当は何をしたいんだっけ?

 Amazonビデオのあらすじをそのまま引用しているんですけど、改めて考えても絶対に自分が観なさそうな映画だな、と。

「恋に仕事にがんばる」とか「サクセスストーリー」とか個人的には全く好みじゃないのに、なんでこの作品を観ようと思ったのかは…お察しください。

 

観る前の期待値がすごく高かったわけではないのですが、いざ再生してみるとまるでミランダから押し付けられる仕事のように次々進んでいく物語にいつのまにか引き込まれてしまいました。

 

そもそもがジャーナリスト志望でファッションに興味がなかった主人公アンディがなぜか一流ファッション誌の編集長ミランダのアシスタントに就職する。1年働けばやりたい仕事に就けると自らに言い聞かせ、鬼のような要求に耐え続けていく。

「ガッバーナってどういうスペルですか?」って電話で質問するシーンや、ミランダの娘の為に『ハリー・ポッターと死の秘宝』の発売前原稿を用意しろと無茶ぶりされるシーンは笑ってしまった。ってかそれはやっちゃダメでしょ。

ミランダの下で働くうちに、全く興味のなかったファッションの世界の魅力に気付いていき、仕事にものめり込んでいくのですが、仕事が軌道に乗れば乗るほど、恋人や友人とはすれ違いが生まれ、私生活に歪みが生じていく。

その過程がしっかり描かれていて、思ったよりだいぶシビアな話だな…と感じました。

 

アンディが友人に「この16年間のあなたのことなら全部知ってる。でも今のあなたは分からない」というような言葉をかけられるシーンがあるのですが、仕事を始めてしまうと生活時間の殆どを職場で過ごすことになるので、たかだか数ヶ月でも価値観が変わってしまうことって十分あり得ることだと思うんですよね。このセリフはかなりハッとさせられました。

恋人であるネイトに「洗脳」という表現をされていたのもあながち間違いではないと思います。現にこの後別れを告げられて、話し合おうというタイミングで職場からの電話が鳴ってしまい、アンディは「出ない」という選択肢を取れなかったわけなので…。このときのアンディは目の前の事に付いていくのが精一杯で「選択」をする事ができてないんですよね。「I have no choice!」という台詞が何回も出てくるし。

 

そして同僚の想いを蹴ってパリ行きが決まり、ミランダの家族を想う一面と、自らの目的の為に平気で他人の想いを踏みにじる姿勢を目の当たりにする。

ミランダ役のメリル・ストリープ、全編通して雰囲気が凄い(当たり前!)んですけどこのタクシーのシーンは本当に「悪魔」という表現がぴったりでした。こういう形でタイトル回収してくる作品は好きになってしまうなあ。

最終的にアンディはミランダに背を向けて去っていきますが、序盤と違って「ミランダの仕事の意義も魅力も理解した上で」ミランダとは違う道を「選択」したというのが綺麗な終わり方でした。道を違えたアンディをミランダが人間として評価しているのも良いポイントかなあと。

 

正直ずっとセックス・アンド・ザ・シティみたいな頭港区女子作品だと思っていた(本当にすいません)んですけど、仕事と私生活の軋轢、そして職業人として生きていく上での「選択」について切り込んだ良作でした。「ゴージャス&ユーモラスなサクセスストーリー」ではなくない???と思ったし、観賞前の印象をいい意味で裏切られました。

友人が一番好きな映画と言っていたのですが、それも納得できる内容だと思います。

 

そしてここまで書くのを我慢していましたが、アン・ハサウェイがとんでもなく可愛い。服ダサくても明らかに一番目立つでしょ。

 

おしまい。