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他人の好意を台無しにするブログ

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん

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アヌシー国際映画祭で観客賞も受賞したフランスのアニメ映画。自分の周りでも何人か観に行っている人がいて、(動機はどうあれ)かなり良さそうな反応だったので気になってはいたのですが、いかんせん上映館が少ないし遠い、その上社会情勢の影響で映画館自体が休業している…と悩んでいたところ、なんと休業から空けた自宅最寄りの映画館で上映されると知って早速行って参りました。ららぽーとしか信じられない。

今の映画館、1席空けることになっているから快適だし結構面白い過去作も上映しているのでお勧めです。レイトショーをやっていないので平日に行くのはやや厳しいですが…。

 

北極探検を敢行中に行方不明になった祖父を探すために、主人公サーシャが旅に出るという、王道の冒険もの。画風とは裏腹に「旅の厳しさ」を正面から描いているのが良かった。特に北極に到着してからサーシャ達に襲い掛かる自然の猛威と、それによって船員たちが冷静さを失っていくところはかなりスリリングでした。

サーシャは基本的に芯の強いヒロイン(こういうタイプめっちゃ好き)で最初は彼女を認めていなかった周りの船員にも受け入れられていったのですが、旅の厳しさと不安、恐怖に煽られた彼らに疫病神扱いされ、仲の良かったカッチにすらも「お前のせいだ」と言われて泣きながらキャンプを去ってしまう。

観ていてキツかったシーンです。

ただそのような厳しい部分をしっかり描写したからこそ、最後のシーンでの晴れやかな表情や、エンドロールでの父親との抱擁がより一層光っていたのだと思います。

絵柄も独特で、日本のアニメとは全く違うシンプルなもの。前に観たフランスのアニメ映画とも違っていて、絵本の挿絵みたいだなとずっと思っていました。その画風での風景描写がとても綺麗。緻密さと美しさは必ずしもイコールではないんだなと再認識しました。どちらかというと写実的な背景を好きになる傾向にあるので尚更ですね。

北極の地に陽光が当たる描写と、北極を発つときの空の色が特に印象的でした。

予告動画で「J.ヴェルヌの本を読む至福の時間のよう」というLe Mondeの寸評が引用されていましたがまさにその通りで、ヴェルヌの冒険小説を読んでいるようなワクワク感にあふれる作品でした。元々好きなジャンルの作品でもありますし、映画館で観られてよかったです。