『劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME』『さよならの朝に約束の花をかざろう』
岡田麿里さんの脚本作品は割と観るようにしているのですが、2年前に公開された『さよ朝』は監督までやっているのにタイミングを逃して観に行けていませんでした。
円盤化や配信もされているので観ようと思えばいつでも観ることはできたのですが、せっかくだからスクリーンで観たいな…と思っていたら空いている日にドリパス上映の情報が飛び込んできたので、即チケットを買いました。
ちなみに『花咲くいろは』の劇場版とセット上映だったのですが、こちらは昨年も上映イベントに行きました。おでん食いながら監督や美術監督の話聞いたの、もう1年前か…。時がたつのは早い。
もう5~6回くらいは観ている作品なので感想も今更という感じですが、やっぱりこの劇場版のエピソードは作品全体を通しても完成度が高いと思いますし、案の定ラストの影踏みで泣いてしまう。
作品を観て涙を流すことってあまりないけれど、本作にはテレビ版からつながる積み重ねがありますからね。
感想も今更とは書いたものの、最初にこの作品を観た20そこそこの頃と比べると、自分の家族というものに対する考え方も変わってきていますし、自分の考え方の変化が作中の皐月と重なったりして作品の感じ方も変わってきているんですよね。
今思うと変なところも多いアニメだけど、今の方がこの作品が心に刺さる部分も間違いなくある。
負けられないし、人生楽しまないといけませんね。
『さよ朝』は本当にあえて前情報断って上映に臨んだので、キービジュアルだけ見て普通に恋愛ものかと思っていたのですが、年を取らない種族・イオルフの少女であるマキアと偶然出会ったエリアルの親子愛を描いた作品でした。まぁマリーのお家芸感はありますね。
P.A.WORKS制作でこういうド直球なファンタジー世界を描いた作品も珍しいと思うのですが、とにかく全編通して風景の作画が美しい。美術監督の東地さんが頻回にTwitterで推してるのも頷ける。というか去年お話する前に観に行くべきだった。
故郷を追われたマキアが赤ん坊のエリアルを拾い、自らも母親を知らないのに母親になろうとする姿が健気。尺の関係もあるでしょうが時間軸もテンポよく進んでいき、最初は可愛かったエリアルも成長して思春期・反抗期になり、最終的にはマキアを残して老衰でこの世を去ってしまう。
マキアがイオルフである以上、いつかこういう日が訪れる事は分かっていたのですが、「最後に別れが待っているなら、愛することに意味はあるのか?」というこの作品の問いに笑顔で「愛してよかった」と答えられるマキアというキャラクターの芯の強さが心地よかったです。
もちろん最愛の息子との別れが辛くないわけがなく、「泣かない」という母親としての約束を果たしてエリアルと別れた後、堪えきれずに号泣してしまうシーンはすごくよかった。第…石見舞菜香さん、いい演技するなあ。
個人的に刺さったのは中盤でエリアルが「なんで本当の親でもないマキアがこんなに自分を大切にしてくれるのかわからない」とラングに告げる場面。
20代も後半になり、とっくに自分の両親が結婚して、自分が産まれたときの年齢を過ぎてしまったのですが、今の自分が誰かの親になれるとは思えないんですよね。
最近は親と話す中で当時の実家の経済状況なんかの話を聞いたり、あの年であの仕事なら給料いくらくらいだろうなってリアルに推定できてしまったりするので、両親が自分を育ててくれたことがどれだけ大変だったかってことが子供だった頃より具体的に想像できてしまう。だから、正直なんでここまでしてくれたんだろう…という気持ちもあって、エリアルの心情がありありとイメージできる。
本当の両親ですら…ってところなのに、マキアとエリアルは血も繋がってないですし。
やっぱりアラサーになるとこういう親子関係を描いた作品の見方が変わるのかもしれませんね。自分も親になったらまた変わるのかな。なるのか知らんけど。
岡田麿里さんが描く濃厚な親子関係を3時間たっぷり堪能して大分疲れましたが、この2作品をスクリーンで観られてよかったです。
作品への集中力が段違いなので出来れば映画は映画館で観たいですし、こういう上映イベントがあれば積極的に参加したいですね。声優が来なくても。
おしまい。