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他人の好意を台無しにするブログ

砂の器

 

砂の器 デジタルリマスター版

砂の器 デジタルリマスター版

  • 発売日: 2016/11/02
  • メディア: Prime Video
 


東京・蒲田にある国鉄の操車場内で殺人事件が発生。しかし被害者の身許が不明で捜査は難航。迷宮入りかと思われた矢先、被害者が殺される直前に或る男と会っていたことが判明した。ふたりの会話のなかで交わされていた「カメダ」という言葉。地名か?人の名か?事件解明のために奔走する刑事、今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)は偶然、新進気鋭の天才音楽家、和賀英良(加藤剛)と遭遇する。そして、やがて事件は思わぬ展開を見せ始めるのだった…。

先週観た『ゼロの焦点』と同じく松本清張原作、野村芳太郎監督、橋本忍・山田洋二脚本という盤石の布陣。あまりに有名作すぎて話のオチは大体知っちゃってましたが、他媒体含め今まで観たことなかったんですよね。

中居くんが主演のドラマ版を親が観ていた記憶はあるのですが… 

 

序盤は身元も分からない被害者の手がかりを求めて全国を回るトラベルミステリー仕立てで、『ゼロの焦点』の時も思ってたんですけど、映像がいちいち旅情をかきたてるんですよね。秋田、島根、伊勢、石川、大阪と方々を訪ねていくけど鉄道だったり、なんてことない田舎の風景も全てが魅力的に映し出されていたなあと。

全部観終わると、冒頭の意味深げな秋田のシーン全部意味なかったの?ってなりますが

ちなみに石川の大畑村(架空の村)は完全に白川郷にしか見えなかったんだけど、調べたら五箇山でした。

 

そしてなんといっても終盤、「宿命」をバックに真相が明かされ、親子の壮絶な道程が描かれるシーンは凄まじいインパクトがありました。差別・偏見に晒されて傷付きながらも、確かな親子の絆はそこにあって、それでも2人に別れが訪れるのもまた宿命で。2人の旅路はどうしようもない苦難の道だったけれど、ここでも旅の風景は本当に綺麗だったのがまた残酷だなと思いました。この回想シーンに殆ど台詞がないのもすごい。

そして最後に父・千代吉が息子を想う一心で、名を変え成功を収めた秀夫の顔を嗚咽混じりで知らないという場面が突き刺さって、めちゃくちゃに心を揺さぶられるんですよね。なんとなくもう死んでるんじゃないかな…と思ってた千代吉が、20年以上身を案じ、死ぬまでに1度会いたいと願い続けてきたのに…。宿命って残酷すぎる。

 

殺された元警察官があまりにも聖人君子すぎて、殺す動機としては弱くないか?って思ったり、なんで血が付いたシャツ列車からばらまいたん?って変な突っ込みどころはあるんですけど、間違いなく傑作といえる作品でした。本当に観てよかった。

 

ちなみに他の映像媒体では千代吉のハンセン病設定が変更されているみたいなんですけど、他の理由ではなかなかこの旅路を説得力を持って描くことは難しいような…。

この作品の魅力が最も凝縮されている部分だと思うので余計にそう思ってしまう。