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他人の好意を台無しにするブログ

音楽朗読劇「嵐が丘」

arashi.rodokugeki.jp

 

2/22 19:00の回

ヒースクリフ千葉翔也
ヒンドリー/ヘアトン:田丸篤志
エドガー/ロックウッド:山本祥太
キャサリン/キャシー:山崎はるか

 

最初にはっきり言っておきますが千葉翔也くん目当てです。

『色づく世界の明日から』の葵唯翔役で初めて名前を知って、いつだったかのニコ生で熱い(気持ち悪いとも言いますが)作品愛を語ってくれたときから密かに気になっていた声優さんです。

その後色づくロフトでも信頼しかないトークを展開していただき、ついでにわざわざ移動してまで僕と乾杯してくれたこともありましたね。

『色づく』以外でも『どろろ』『炎炎ノ消防隊』『月がきれい』『BANANA FISH』といった他の出演作を後追い含め何作か観る機会があって、今期も『地縛少年花子くん』で演技を観ながら「もうこれ僕千葉くんのファンなんじゃね?」と思ってたところにこのイベントの告知があったので、いい機会だと思い応募してみることにしました。

アニメの朗読劇ではなく、『嵐が丘』という文学作品であるという点も面白そうでしたし。

 

古典文学は読んでおいて損はしない(私見)ので、朗読劇に行く前に原作も読み直すことにしました。元々うちの本棚にあったので何年か前に読んだはずなんですけど、正直大まかなあらすじくらいしか覚えていなかったので…。

嵐が丘〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

嵐が丘〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者:E・ブロンテ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/01/13
  • メディア: 文庫
 
嵐が丘〈下〉 (光文社古典新訳文庫)

嵐が丘〈下〉 (光文社古典新訳文庫)

 

ヒースクリフはあたしなの」というセリフに象徴されるように普通の恋愛感情を越えた繋がりで結ばれたキャサリンヒースクリフが数奇な運命に翻弄される…といえば聞こえはいいんですけど、ほぼすべての登場人物が人格に問題を抱えているのでキャラクターに対する感情移入とか感動の愛とかそういうのとは無縁な物語です。基本的にずっとヒースクリフの歪んでるのか真っ直ぐなのかよくわからない(どっちの側面もあるんでしょうけど)情念が嵐が丘という土地に悲劇を巻き起こしていく、そういう話です。

ヒースクリフを筆頭に登場人物の性格が軒並み歪んでいるというか、粗野で悪辣だったり、割かしそうじゃない登場人物もおつむに問題があったりと、一般的にアニメで見るようなキャラクターとはかけ離れた人物造形をしている作品なので、出演者の皆さんがこのキャラクター達をどう演じるか、開演前からすごく楽しみでした。

今まで見た千葉くんが演じたキャラは唯翔だったり小太郎だったりシン・スウ・リンだったり、今やってる光くんもですが優しさや人の好さを感じる演技が印象的だったので、作中で悪魔だの死神だの散々言われているヒースクリフのような粗野で品性もなく、悪意に満ちたようなキャラクターを演じるっていうのがイメージわかなくて、本当にどう演じるんだろう…と思っていました。

 

原作は上下巻で700ページ以上ある長編で、登場人物も4人の声優さん(ヒースクリフ以外は1人2役)ではカバーできないくらいにはいるので当たり前なのですが内容はかなり端折られていたのと、かなりセリフが上品になっているというか、毒気が抜かれていた感じを受けました。キャサリン1号(この話にはキャサリンが2人いてめんどくさいので母親の方を1号って呼ぶことにします)とヒースクリフが普通にイチャついてて、普通の恋愛もののようにシンプル化されてたのは解釈違いかもしれない。あの2人の関係は赤い糸というより血塗られた鎖で繋がれているような感じで、決して綺麗な恋愛関係ではないと思うんですよね。深いのは間違いないんだけど。1号はヒースクリフにハンサムとか言わないと思うし、あの2人はそういうのじゃない。一緒にしないでほしい。前半だと田丸篤志さんのヒンドリーの演技がすごく印象的で、ヒンドリーというキャラクターの底意地の悪さ、ヒースクリフに対する悪意が滲み出ていたと思います。寡聞にして他の作品をほとんど知らないんですけど、真っ黒な凄みのある演技には圧倒されました。

 

後半では、お目当てである千葉くんのヒースクリフの演技がとにかく凄まじかったです。前述の通り、善良さが滲み出るキャラクターを演じているイメージが強かったので、1号に悲痛な心情を伝えるシーン(ここは解釈違いがなかった)、ドス黒い復讐心で2号にビンタしながら嵐が丘を手中に収めようとするシーンは本当に今まで聴いたことのないような負の感情が表現されていて、声優ってすごいな…。という当たり前のことを再認識してしまいました。なんか前もどこかの記事で書いたような気がしますが、こういうマイナスの感情をしっかり表現してくる役者さんに弱いのかもしれません。

 

朗読劇というものに参加するのはもちろん人生初の経験だったのですが、偉大なる先達が「オタクはみんな朗読劇が大好き」と言っていたのも納得だなあ、と思えるイベントでした。名前を挙げなかった声優さんも基本的に1人2役かつ作中の時間経過に伴う年齢の違いも見事に演じ分けておられました。

Twitterでみんなの感想を漁ってみると複数の回に参加するとキャストごとの雰囲気の違いも感じられて面白かった、みたいな意見がちらほらあったので、次こういう機会があればそういうのも楽しめたら良いなという反省点もありますが。

 

結構軽いノリで参加してみたんですけど、隣のお姉さまが開始20分で寝息立てながら居眠りし始めかなり興を削がれた以外は最高の黄金体験でした。また朗読劇があったら積極的に参加してみたいかも。