七人の侍
映画館へのアクセスが良くなったのを良いことに午前十時の映画祭に頻繁に足を運んでしまいます。この企画今年度で最後なんですけどね。
今回チョイスしたのは『七人の侍』。邦画観るの久しぶりかもしれない。
リメイク作の『荒野の七人』は2回観たし、そのまたリメイク作の『マグニフィセント・セブン』なんかも観たことあるのに、27歳にもなって本家本元を観たことないってどーなのよ、とは思っていたので良い機会でした。
3時間オーバーの超長編映画なのですが、開幕から農民が悲嘆するシーンの緊迫感ある演技につられてすぐに作品に引き込まれてしまいました。
台詞なしのシーンもかなりあるけれど役者の動きや表情で心情がしっかり伝わってくる。
アクションシーンもタイマンの剣戟なんかはないんですけど、カメラが動きまくって乱戦の臨場感は凄まじい。
とまあ60年前のモノクロ映画ですが今の時代に観ても迫力のある画面が作られていると思います。
日本映画でも有数の名作と言われてるような作品だし当たり前!ではありますね。
ストーリー的には侍たちに野武士退治を依頼する農民たちが小市民的で、悪い言い方をすれば自分勝手に描かれていたのが印象的でした。
いつもはあらゆることに怯えてるのに野武士が捕虜になって有利な立場に立つと我先に暴力を振るおうとするし、ちゃっかり落武者狩りしてるし、ランブルタウンの住人みたいで現代の価値観からすると観ていてすごく腹立たしい。
もちろん農民も野武士も生きるのに必死なのは伝わってくるのでどっちが悪いとかそういう話ではないんですけど。
侍たち同様こいつらを守る価値あるのかよって思ってしまうような庇護対象が描かれる中で、それでも成すべきことを成すために戦う侍たちの姿がこの映画の真にヒロイックな部分だと思います。
現実は真っ白と真っ黒の二項対立じゃないし、何かを守って誰かを倒せばすべてうまくいくなんてことないのですが、「それでも」信念を持って戦う精神性がヒーローものの魅力だと思いますし、近年の(僕が好きなタイプの)作品にも根底的なところで通ずる部分だと思いました。
あとはシリアス全振り作品なのかと思っていたのに笑いを取りにくるようなシーンが随所に挟まれてたのはいい意味で驚かされましたし、しかもそれが面白いのは存外の評価点ですね。そういうのはだいたい菊千代。こんな武士いるのかよ…ってくらい騒がしいキャラクターでしたが観ていて楽しかったですね。
長丁場の映画にもかかわらずエンターテインメントとしての完成度が高く退屈せず観ていられる…といいたいところですが3時間オーバーはさすがに長いので家で観てたらダレてたかもしれませんね。
あらゆるデバイスで映画にアクセスできる時代ではありますが、やはり(画面の迫力や音響は前提として)他の情報を極力シャットアウトして作品に集中できる環境こそが映画館の魅力だと思うので、こういう作品こそ機会があれば映画館で観ていきたいです。
途中休憩で携帯見たら職場から連絡来てることに気付いて焦りましたがガン無視して最後まで観てよかったです。