モンスター
アメリカで6人を殺害した実在の連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスをモデルにした映画。話は大体分かるけど観たことないよな…と思ってDVD借りてきたのですが、何年も前に1回観たことがあったのを最初のシーンで思い出しました。
アラサーに差し掛かって記憶力薄弱になっている…。
幼少時から暴力と虐待に晒され、売春で生計を立てるしか生きる術がなかったアイリーンが、自殺を考えていた際に同性愛者の女性セルビーと出会い、「愛」を知っていく。
ここから美談になってもいいと思うんですが、まともな育ち方をしておらず売春の世界しか知らなったアイリーンが堅気の生活ができるわけもなく職には就けない。
セルビーはケガをしているし、正直世間知らずで特に人間出来ているわけでもないので割と、というか生活面に関しては全くもって役立たず。
結局アイリーンにできる金の稼ぎ方は売春しかなく、客に暴行を受けて衝動的に殺人を犯してしまう…、と物語は基本悪い方にしか進んでいかない。
「そういう生き方をするしかなかった」アイリーンの悲哀が映画全体を通して痛々しいほどの描写で描かれている作品でした。
「モンスター」なんて呼ばれ方をしていますが、彼女は殺人狂のサイコパスではなく、好きで人殺しをしているわけじゃないんですよね。
だから普通に殺人に罪悪感や恐怖を感じる。手を震わせながら殺人を逡巡するシーンや、殺人を犯してしまった後の慟哭から伝わる悲痛さが凄まじい。
その凄まじさを醸し出しているのは間違いなくこの役を演じるために10kg以上体重を増やし眉毛全部抜いて役作りをしたシャーリーズ・セロンの気迫の演技。
そりゃアカデミー賞とりますよ…
最終的にアイリーンは逮捕され、セルビーは検察側で証人台に立った上、死刑になってしまう、というどこまでも救われない結末で物語は終わりを迎える。
個人の努力ではどうやっても変えられない人生もある、という普段目を背けがちな残酷な真実が心に刺さる作品でした。
自分含めてなのですが、人生の希望を語れるような、努力とか幸運で人生が変わる場所に立っている人間は、それだけで恵まれているんですよね。
こういう運命の残酷さを描いた作品は好みなので観ていて楽しい作品ではありました。
おしまい。