その分現金でくださいよ。

他人の好意を台無しにするブログ

新世界より

アニメも観てたし大体話知ってるんですけど、面白すぎて計1500ページを4日くらいで読み切ってしまった。

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

 
新世界より(中) (講談社文庫)

新世界より(中) (講談社文庫)

 
新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

 

貴志祐介の小説は2作だけ読んだことがあって『青の炎』は10年以上前に読んだけれど今でも鮮明に僕の記憶に残ってる傑作(マジで面白いので読んでほしい)だと思う一方『悪の教典』は話題になりはしたし面白いのは間違いないんですけどまぁ…というくらいだったので、本作はどうなのかな、と思いつつ読み進めていました。

 

「呪力」という規格外の力を手にしてしまった人類のifを描いた世界の完成度の高さにただただ驚くばかり。

純粋培養のような街を作り上げ、異分子を徹底的に排除することによる歪みを描くのはこの手の小説のストーリーとしては定番ですけど、バケネズミの社会性、ひいては存在そのものや街の外の変質した生態系を通して人間の無意識的・本質的な残虐性がありありと描かれているのが印象的でした。その中で最後に早季が出した答えが攻撃抑制と愧死機構の否定、というのも興味深いところ。

都合の悪いことに無理やり蓋をして異分子を徹底的に排除して仮初の秩序を作り上げても、その秩序はふとしたきっかけで崩壊してしまい、その混乱に人は全く対応することができない。人間である限り悪意や攻撃性などと言った都合の悪い部分とはうまく付き合っていかないといけないけれど、それをなかったかのように否定して目を背けるだけでは解決法にならない、なるほどなあ。

 

壮大なスケールで描かれる美しくも残酷な世界に惹かれっぱなしな作品でした。

アニメ観てたのも10年近く前だし、もう1回観てみるか。