2023年4月振り返り
もう7月です。
Twitterで「ブログ書かないんですか?」って言ってくれる数人のおかげで何とか書くことができました。観た映画の感想くらいしか書くことないし、そんなに価値のあることを書いているつもりもないけれど…。
①聖地には蜘蛛が巣を張る
2017年だか18年にイラン旅行に行ったとき、現地で出会った日本人の方に「マシュハドは本当にいい街だった」という話をされてからずっと気になっていた。そういう経緯で、マシュハドを舞台にした映画というだけで本作を観るには十分なモチベーションになった。こんな凄惨な事件が起こっていたことは流石に知らなかったけれど。
…と思って映画を観に行ったのにロケ地はヨルダンのアンマンだったらしい(ちなみにアンマンにも行ったことがあるが、あまりいい思い出がない)。
冷静に考えればこんな内容の映画をイランで撮れるわけがないのだが。
マシュハドで起こる連続殺人事件の調査のため、現地を訪れた主人公の女性ジャーナリストが1人でホテルに泊まろうとしたときの対応は特にめちゃくちゃイランっぽいなあ…と思ってしまった。女性は1人で行動する権利が与えられていないというか、男性の所有物みたいな感覚がデフォルトみたいな…。
僕は1回旅行させてもらったくらいしかイランの事を知らないし、長年存在してきたであろう価値観にどうこう言える立場でもないけれど、それでも16人の女性を殺害した人間の無罪を信じる世論が一定数存在して、あわやそれが通ってしまいかねない社会が存在することには驚きを隠せなかった。
ラストシーンでは犯人の子供にも思想が伝播していることを印象付けるシーンがあって、この価値観は次世代にも伝わっていく根の深い問題なんだな…と思わされたり。
それはそれとしてマシュハドには1回行ってみたいものである。
「午前十時の映画祭」で鑑賞した。長い映画はやはり映画館で観た方が集中できる。
約60年前の作品だがコメディもドラマ面も面白く、現代でも色褪せない魅力のある作品であることは間違いない。クラシカルな作品については正直教養だと自分に言い聞かせて観ている部分もあるので、観終わった後に「見てはみたけどこれ面白いの…?」という気持ちになることも多々あるのだが、本作についてはそのような感情とは無縁なまま映画館を後にすることができた。
ヒギンズの悪口を歌っていたら本人登場したシーンのリアクションや、競馬場でのドタバタなんかは、コテコテではあるのだがやっぱり笑えてしまう。
ストーリー面でも、エライザが言葉遣いなどの教養を身に付けるにつれて人間としても洗練され成長していく過程や、ヒギンズとの関係性の変化あたりが見どころ。
特にヒギンズとのロマンスについては、盲信的な惚れた惚れないではなく、好きな部分も嫌な部分もある中で…と多面的な描かれ方をしていたのが好印象だった。ヒギンズがまぁまぁクソ野郎で、全面的な好意には値しない人間だからというのもある。
特にヒギンズが暖炉に投げた指輪を拾うときのエライザの表情の移り変わりはそれを象徴する場面だと思っていて、「このオードリー・ヘプバーンっていう人もしかして凄い女優さんなのでは?」という気付きを2023年にもなって得ることができた(30歳・男性)。
余談としてはフェミニストの方が聴いたら卒倒しそうな劇中歌(当然ヒギンズが歌っている)があって流石にヤバいだろ…と思ってしまったけど、作中の時代背景や価値観を尊重していただくということでひとつ。